関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
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●英国ロイヤル・バレエ・スクールの来日公演

 英国ロイヤル・バレエ・スクール(RBS)は、以前にも来日したことがあったが、関西地方だけの公演だったので、東京では初めて舞台を披露した。
 RBSは、1926年に英国バレエの生みの親であるニネット・ド・ヴァロワが設立した、舞踊芸術アカデミーを前身としている。当時は女子のみを教える小規模のものだったが、ド・ヴァロワたちの努力によって世界一流のロイヤル・バレエ、バーミンガム・ロイヤル・バレエのダンサーを育成するバレエ・スクールへと発展した。

 演し物は、『アイズ・ザット・ジェントリー・タッチ』=フィリップ・グラス音楽、カーク・ピーターソン振付、『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』より「ファニー・エルスラーのパ・ド・ドゥ」=フェルディナン・エロルデ音楽、フレデリック・アシュトン振付、『ライモンダ』第三幕抜粋=アレクサンドル・グラズノフ音楽、マリウス・プティパ振付、『アンイーブン・グラウンド』=メルセデス・ソーサの歌、ポール・ボイド振付、『モノトーンズ』II=エリック・サティ音楽、アシュトン振付、『ピアノ・コンチェルト』♯2=ロウエル・リーバーマン音楽、ロバート・ヒル振付。

 クラシック・バレエ2曲と、コンテンポラリー・ダンス4曲のうち3曲はクラシック・バレエの技法を基礎としたもので、もう1曲はブレイク・ダンスを採り入れたコンテンポラリー作品、という構成であった。これはツアー用のプログラムだが、こうした構成----特にクラシックとコンテンポラリーの比率から、ロイヤル・バレエあるいは世界の第一線のバレエ団がどのようなダンサーを必要としているか、推測することも可能である。

 RBSのダンサーたちは、なかなか引き締まった舞台を見せた。やはりよく踊っているアシュトンの作品はうまく踊る。音のとり方から作品の趣旨をしっかりと汲み取り、自信を持って踊っていた。グラス曲の『アイズ・ザット・ジェントリー・タッチ』やリーバーマン曲の『ピアノ・コンチェルト』♯2なども、軽快に若々しさを前面に出していたし、『アンイーブン・グランド』では、自然に身に着いたロンドンのストリート感覚を素直に踊っていて好感の持てる舞台だった。「ロイヤル」という称号を背負っているためか、ダンサーたちの踊りにはプライドが感じられる。ぜひ、また観たい公演である。
(3月24日、ゆうぽうと簡易保険ホール)


●コンドルズの『JUPITER』、H・アール・カオスの『神々を創る機械2005』

 ニューヨークのジャパン・ソサイアティで観客の爆笑を誘い(Dance Cube27号ニューヨーク・ダンス直行便にレポートあり)、アメリカ・ツアー2005を大成功させたコンドルズが、ロックンロールの殿堂、渋谷公会堂に初登場して『JUPITER』を上演した。

 ステージから観客席の最後部まで五色のテープを、満艦飾よろしく張り巡らし、近藤良平がその中心を掴んでセリから登場する、という派手なオープニング。
 かつては渋谷公会堂を超満員にした、リタイヤしたロックスターが、何かにつけてその熱いステ−ジにこころが往ってしまう、というギャグがおもしろかったし、現代の日本人の生態を英語で紹介するショーも大受けだった。

 ダンサーのキャラクターを生かした、次々と繰り出されるテンポの良いバラエティ風の舞台に観客が同調して、会場の雰囲気をいっそうもり立てる。お馴染みの人形劇やCM仕立ての映像、もちろんダンスもあり、コンドルズならではの青春のキャンパスに戻ったような爽快なライヴ感覚溢れる、鮮やかな公演だった。『JUPITER』は2000年のニューヨークに始まり、北米、南米、アジア、オセアニアなどで上演しつつ育ててきた作品である。
(3月15日、渋谷公会堂)

 H・アール・カオスの大島早紀子振付による『神々を創る機械 2005』は、2001年に初演された作品をさらに進化、洗練させた舞台である。

 脈打つ赤い血を連想させる深紅のワイン、真っ赤な薔薇、紅く煌めく花弁などに、人類の生命を象徴させて、真正面から現代と向き合ったダンスである。「命」に襲いかかってくる、毒薬のような今日の様々な想念と格闘する白河直子の繊細でしなやかな身体。その鮮烈な動きの軌跡が、危機に直面している現代の命の姿を、白日の下に曝け出す。

 ラストシーンでは、煌めく赤い花弁と白河直子の身体が一体をなって昇天していくかのようであった。時代を切り裂くような大島の鋭い語り口が、いっそう明瞭に示された舞台であった。
(3月12日、東京芸術劇場中ホール)

●東京シティ・バレエ『dance one forty plus』

 ティアラこうとうが主催するティアラ140+シリーズの#5の「東京シティ・バレエ meets コンテポラリーダンス」として、『dance one forty plus』の公演が行われた。これは100年近い歴史を刻んできた日本のダンスの初期の作品と、今日上演されているダンスを同時にひとつの舞台で観てしまおう、という企画である。

 まずは伊藤道郎が創案したダンスの基礎訓練のシステム「テン・ジェスチャー」と、その動きに基づいて創られたダンス『アヴェ・マリア』。身体の動きが、流れるように構成されて優雅な、敬虔な雰囲気の溢れる作品。指導はイトウ・ミチオ同門会の井村恭子である。

 石井獏作品は女性ソロの『アニトラの踊り』。東京シティ・バレエの若林美和が踊った。ショー的な要素があって姿体の美しい見せ方、エロティックな視線などが印象的で、観客に直接うったえかける動きで構成されている。獏の長男、歓夫人の石井はるみが指導にあたった。

 今日のダンスは、野坂公夫振付の『double --分身--』。男性と女性のパ・ド・ドゥで、重なり合い絡み合う複雑な動きである。日本のダンスの初期作品とはまったく趣きが異なり、内面的、内省的な作者の内側から編み出された動きとその構成によるダンスである。山口智子と小林洋壱が踊った。


 後半は若い女性振付家による作品が続く。木佐貫邦子の『コンテCCK』は、このホールの三角形のステージの形と大きさ充分に計算した、3人の女性ダンサーのダンス。3人のダンサーが1対1、1対2、2対1、3人などにばらされて踊るのだが、見ていてたいへんにバランスがいい。動きのヴァリエーションも豊かで、さまざまに変化するフォーメーションの楽しさで見せるダンスだった。冴子振付の『Super Axis』はブルーのトップとピンクのパンツ、イエローのトップとパープルのパンツのファッションを纏った2人の女性ダンサーによるダンス。動きもまた鮮やかだった。最後は、JOU振付の『Polychrome Garden』。セーラー服を着た6人のダンサーが踊る、いわゆるスクール・ガール・ダンスである。学校の校庭の現実音をそのまま流し、女子高生の生態をダンスにしている。独特の感覚の言葉や姿体、仲間との距離感など思春期の女性の身体のリズムをうまく捉えていた。かつてフランクフルト・バレエが来日した時、京都公演だけだったが、スクール・ガール・ダンスを上演したことがあり、この舞台を観て思い出した。あの時はバケツをやりとりしたりするスリリングな表現に重点をおいたダンスだった、と記憶している。JOUの作品は動きの構成もよくできていたし、観察もなかなか鋭い。しかし、捉える対象が作者と近いためか、イメージが飛躍するような描写は少なかったかもしれない。



(3月11日ゲネプロ、ティアラこうとう小ホール)

 

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