関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi

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●ルジマトフ&ロシア国立バレエ団の『シェヘラザード』ほか

 芸術監督のヴァチェスラフ・ゴルデーエフが率いるロシア国立バレエ団は、今回が初来日である。バレエ団とともに来日した千野真沙美を始め、佐々木大、岩田守弘、長田佳世などお馴染みのダンサーが在籍していたため、もう何回か来日しているような錯覚に陥っていた。

 第1部では、ふたつのゴルデーエフ自身の振付作品が上演された。千野真沙美とプロツェンコが踊ったのは『盲目の少女』(音楽リッチ)。光の筒のようなスポットの中で踊られるパ・ド・ドゥである。総タイツのダンサーが光と闇のコントラストを際立たせ、命を愛おしむやさしさを描いた。『パガニーニ』(音楽ヘンデル)は、頭から赤いタイツを纏い黒いマントをなびかせる悪魔と男のパ・ド・ドゥ。ヴァイオリニストの栄光と俗世的なプレッシャーの葛藤を舞踊にしたもの。ゴルデーエフの振付はテーマをはっきりと打ち出し、無駄な動きがまったくない。バレエの精髄を知悉した舞踊家の作品というべきだろう。

 ほかに、プティパ&プーニの『ヴェニスのカーニバル』、『オンディーヌ』、ラブロフスキー/ゴルデーエフ&グノーの『ワルプルギスの夜』などのこのカンパニーらしい演し物が踊られた。

 第2部は、マリインスキー劇場からユリア・マハリナ、ファルフ・ルジマトフをゲストに迎えた『シェヘラザード』(フォーキン&リムスキー=コルサコフ)である。良く知られているようにこの作品は、1910年にパリ・オペラ座でディアギレフ率いるロシア・バレエ団によって初演された。踊ったのは、イダ・ルビンシュテインとニジンスキーだった。ここでは、マハリナがゾベイダに、ルジマトフが金の奴隷に扮し、およそ100年前のパリ・オペラ座を震撼させた作品の最大の見せ場である豪華絢爛のパ・ド・ドゥを踊った。豹のごときしなやかさとあふれるような魅力を発散するダンサー、ニジンスキー亡き後、金の奴隷を踊るのに最もふさわしいのはやはりルジマトフをおいてはない、そう確信させた舞台だった。(6月26日、オーチャ−ドホール)

ルジマトフ&マハリナ

●サンクトペテルブルク・バレエ・シアターの初来日は『白鳥の湖』

 ソ連体制崩壊後、ロシアにはさまざまなバレエ団が誕生し消えて行った。優れたダンサーが豊富で、バレエの観客の多いロシアでさえ、バレエ団のマネジメントはたいへんに困難なのである。そうした中で、今回、初めて来日したサンクトペテルブルク・バレエ・シアターは、国家助成やスポンサーに頼らない純然たる民間運営のバレエ団だという。

 プリマ・バレリーナは、ワガノワ・バレエ学校を98年に卒業したイリーナ・コレスニコヴァ。ペルミやヴァルナの国際バレエ・コンクールで入賞した実績をもっている。
『白鳥の湖』の舞台は、やはりコレスニコヴァが素晴らしかった。美しいプロポーションと落ち着いた演技、安定したテクニックでプリマ・バレリーナとしての存在感を示した。舞台全体の色彩が、サンクトペテルブルクの香りを放っていて、北の国の深い森の幻想を感じさせた。

 さらに新しいダンサーが生れ、ロシアのバレエ団に清新な風を吹き込んでくれることを願いながら、サンクトペテルブルク・バレエ・シアターの今後を見守っていきたい。(6月8日、文京シビックホール)



●バレエ シャンブルウエストの新制作『コッペリア』


 バレエ シャンブルウエストは今日まで、オルゴール演奏(1996年)とオーケストラ演奏(2000年)の『コッペリア』を上演している。今回の『コッペリア』は、新国立劇場などにも関わっているロシアの舞台美術家、ヴェチェスラフ・オークネフが新たに制作した装置とオーケストラ演奏による舞台である。

 スワニルダは川口ゆり子、フランツは船木城、コッペリウスは山内貴雄だった。
幕開きの舞台美術からメルヘンふうで、マイムを比較的多く使い、麦の穂の占いの踊りなども楽しくおおらかな雰囲気があふれる。第2幕は、スカーフやコッペリウス博士が創った人形を使った踊りが工夫されている。フランツはここでは寝ているだけだがスワニルダは大活躍、コッペリウスも細かい演技を見せる。ドラマより踊りの楽しさを際立たせる演出になっていた。

 3幕もテーマ別のデヴェルテスマンから、グラン・パ・ド・ドゥへ流れも良かったと思う。全体にソリストは安定していたが、コール・ドにもう少しはじける若さがほしい。(6月17日、ゆうぽうと簡易保険ホール)

 

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