斎藤 珠里 text by Julie Saito
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THEATRE NATIONAL DE CHAILLOT  シャイヨー劇場から
William Forsythe avec The Forsythe Company: DECREATION
ウィリアム・フォーサイス振付、フォーサイス・カンパニー公演:『デクリエーション』


 パリ・シャイヨー劇場のサル・ジャン・ヴィラーで6月19〜21日、フォーサイス・カンパニーがウィリアム・フォーサイス振付作品『デクリエーション』を公演した。初演は2003年4月、フォーサイスが芸術監督を務めていたフランクフルト・バレエ団によって発表された。当時のメンバーに島地保武などの新メンバーを加えたフォーサイス・カンパニーが同作品をどのように再演するのか、注目が集まった同公演を20日に観た。

『デクリエーション』
 テーマは、男女の愛憎と嫉妬----、自分に対する相手の気持ちを確かめるセリフを吐いては突き放し、罵倒し、傷つけあう。暴力的なまでの精神的な葛藤が、言葉と身体表現によって否応なく繰り広げられる。ニューヨーク出身のフォーサイスならではの、ウディ・アレンの映画にも通じるインテリ受けするアプローチだ。

 冒頭シーンで踊るのは、安藤洋子。華奢な身体が傾いて、かくかくと膝から折れて地に崩れてゆく様が、この作品のメッセージを暗示する。

 セリフの中で頻繁に聞かれた言葉は、「Trust」、つまり「信じる」。愛には問題が多い・・・というナレーションの前置きに続いて、男が女の目の中を覗き込むようにして尋ねる、「本気?」。その答えを瞳の中に感じ取った男は、冷たく女にこう言い放つ、「冗談だよ」。侮蔑に満ちた嘲笑を受けて、女は背中をくるっと向ける。とはいえ、作品全編で「I love you」が聞こえてくる。相手を信じたくても信じられず、信じていいのかもわからず、相手を求めたい気持ちは抑えられず----。痴話喧嘩の形を借りてはいたが、病める現代の男女像を映し出していた。

 途中には、笑いを誘うようなコミカルなやりとりや、メンバーのアンデル・ザバラがプロ顔負けの歌のショーを披露してくれて一息つけたが、全体には残酷なほど女性に対する嗜虐的な場面が多く、途中で席を立って帰った客も少なくなかった。特にエンディングでは、丸テーブルの上に乗せた女性を、下からランブの火で炙り、女性の顔や身体に煤がついてゆく、という壮絶を極めたものだった。

 それでも客席にいた元フランクフルト・バレエ団団員は、初演と比べて「ダンサーの一人ひとりに表現の余裕が生まれたように感じた」と話した。一方、フォーサイス・カンパニーに所属して2年が経つ島地保武は「精神的にも、かなり過酷な作品。今まで認めたくなかった自分自身をも発見してしまうような恐怖を感じた」という。そうしたダンサーの内なる声、意識下の中に眠っていた意識を引き出すところにフォーサイスの創作の原点があるようだ。島地もこう話してくれた。「フォーサイスがダンサーを褒めるときって、まさに予想外の、振付されていない部分の動き。無意識の内に偶然、生まれてしまった動きに対して、それでいいんだって言ってくれる。日本から来ると非常に新鮮でしたけれど、実は振付家の山崎広太さんも同じだったんですよ」
(2008年6月20日、パリ、シャイヨー劇場)

『デクリエーション』 『デクリエーション』

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