渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe
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●チェルカウイとカーンの新作ーテアトル・ド・ラ・ヴィル

 11月のテアトル・ド・ラ・ヴィルは、外来が続き、ベルギーからアラン・プラテル・バレエ団、イギリスからアクラム・カーンのカンパニーが招かれ、それぞれ新作を上演した。プラテル・バレエ団のシディ・ラルビ・チェルカウイも、カーンも、それぞれ、モロッコとインドの血を引いているが、生まれはヨーロッパという点が共通しており、こうした文化的環境が、作風にも影響しているのが興味深い。

 まずチェルカウイ振付の『TEMPUS FUGIT(流れる時)』(11月4日から13日)は、今夏のアヴィニヨン祭で上演されたもので、仮想の森を舞台に、移りゆく時の中で展開される人間模様を、アクションとユーモアを交えて描いている。舞台奥には、銀色に輝く森が見られ、そこへ一人二人と迷い込んでいくところから舞台は始まる。民族的なメロディーを口ずさみながら、ダンサーたちが森を徘徊。スルスルと木によじ登って、ブランコに揺れながら、コルシカのポリフォニーのような合唱したかと思うと、逆さになって木から滑り降りるなど、冒頭から目が離せない。
 ダンサーは、チェルカウイ自身を含む10人で、グループ・ウェシュムが舞台上で演奏する世界中の民族音楽に合わせて、自由に歌い踊る。踊りとギャグを交互に織りまぜていく展開の仕方は、ややピナ・バウシュの作風を想起させるが、肌触りはハードでかなり異なっている。ダンサーは、いずれも驚くほど敏捷で、木登りをはじめ、アクロバティックなソロなどで、その力量を遺憾なく発揮する。作品は、1時間40分休憩なし。ダンスのない、言葉によるギャグの場面が、若干冗長に感じられたところもあった。
 この作品では、森の木立に登った時に生み出される数々のユニークな構図を見る者の記憶に刻み付けていく。ラスト近く、ダンサ−たちが、大合唱の中、右から左へと木にからみついていくシーンは、ノスタルジー溢れ、チェルカウイの豊かな想像力の一端に触れた思いがした。

 続いてお目見えしたカーンの新作は『MA』( 11月16日から20日)。タイトルは、母と大地を意味し、母なる大地へ捧げたオマージュといえようか。インドの伝統的な打楽器である太鼓や拍子木に民族的歌唱、それにチェロの響きを融合した激しくリズミカルな音響の中で、カーンと6人のメンバーが踊る。インド舞踊のムードラが儀式的雰囲気をかもし出すとともに、きりきりとしたすばやい回転系の動きからは、内に秘められた無限のエネルギーを感じさせる。前作の『カーシュ』より、動きのヴァリエーションが多様になっており、終演後は、熱狂的な喝采を受けていた。シルヴィ・ギエムが、カ−ンの作品を踊りたがっていると聞いたが、もし実現すれば、非常に興味深いコラボレーションになることだろう。

●第3回<モナコ・ダンス・フォーラム>開催

 モンテカルロで隔年で開催されている<モナコ・ダンス・フォーラム>の第3回が12月14日から18日までグリマルディ・フォーラムで開催される。
 今年の招聘カンパニーおよび振付家は、エミオ・グレコとオペラ・ノース、オーストラリア・ダンス・カンパニー、DOシアター、マリア・パジェ、サハール・アジミ、ジルキ・カルトゥネン、アンリ・オグイク・ダンス・カンパニー、エマニュエル・ガット、ヴァガボンド・クルー、ラシッド・オウラムダン、ロナルド・K・ブラウン、フランク II・ルイーズ、大門四郎、シディ・ラルビ・チェルカウイなど14団体で、18公演が行われる。
 最終日の<ニジンスキーの夕べ>では、ニジンスキー賞の発表がある。今年度のノミネートは次の通り。
 

【男性舞踊手】部門 カルロス・アコスタ
アンヘル・コレーラ
ホセ・マニュエル・カレーニョ
ニコラ・ル・リッシュ
ジョゼ・マルティネズ
【女性舞踊手】部門 アリーナ・コジョカル
オーレリー・デュポン
マリ=アニエス・ジロー
タマラ・ロホ
スヴェトラナ・ザハーロワ
【振付作品】部門 勅使川原三郎
『AIR(空気)』(パリ・オペラ座)
・フォーサイス
『DECREATION』(フランクフルト・バレエ団)
・シディ・ラルビ・チェルカウイ
『FOI(信念)』(アラン・プラテル・バレエ団)
・ピナ・バウシュ
『NEFES(呼気)』(ヴッパタ−ル舞踊団)
・ロイド・ニューソン
『THE COST OF LIVING』(DV8フィジカル・シアター)
【新人振付家】部門 アクラム・カーン
ウェイン・マックグレゴア
ラシッド・オウラムダン
シェン・ウェイ
クリストファー・ウィールドン

 

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