渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe
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パリ・オペラ座の デュポン/ル・リッシュとコジョカル/ルグリの『ジゼル』

<ジゼル>第1幕よりジゼルのデュポン


<ジゼル>第2幕よりジゼルのデュポン・リッシュ
 前号でお知らせしたように、パリ・オペラ座では、昨年の6−7月に続いて、ポリヤコフ=バール版『ジゼル』を2月3日から3月4日までガルニエで上演。

  長年上演されてきた演出で、見なれているはずが、ゲストの参加やコール・ドが若返ったことなどで、また印象を新たにさせられた。新年に招聘されたボリショイ・バレエが、『白鳥の湖』で一糸乱れぬ白鳥のアンサンブルを見せてくれたのに刺激されたのか、オペラ座でも、バランシン・プロでは身長がバラバラだったのを、『ジゼル』ではウィリたちの背丈を揃え、以前にもまして統一のとれたコール・ド・バレエが堪能できた。

  初日は、期せずして、オレリー・デュポンとニコラ・ル・リッシュという待望のペアが登場。フランス・バレエの優美なスタイルを体現した夢のようなカップルに、ファンはすっかり魅了された。この二人がオペラ座で組むのは、極めて珍しく、全幕ものでは、私の知る限りノイマイヤーの『シルヴィア』以来これが2回目。年齢的にも近く、お似合いの二人がなぜ一緒に踊れなかったか、という事情については、オペラ座側の都合があったようだが、少なくとも、ニコラに関しては、愛妻オスタがエトワールになって以来、全幕もので他のエトワールと組むことは絶望視されていたので、今回の共演はほとんど奇跡に近いといっていいだろう。
 
ペアにもいろいろあり、長年かかってパートナーシップを築いてくる合と、努力しなくても合ってしまう、いわば会うべくして会ったというのと二通りあるが、オレリ−と二コラの場合は後者にあてはまる。

 オペラ座で初めてのジゼルに挑戦したオレリ−は、第1幕は、純粋で、恥じらう仕草も愛らしく、狂乱の場も決してオーバーにならずに迫ってきて共感を誘う。ちょっとした動きのタイミングが新鮮で、これがニコラの自然で飾らない演技とよくマッチする。第2幕は、優雅なシルエットで、モニク・ルディエールやイザベル・ゲランらの名演を継承するようなフランス・スタイルを見せ、オレリーの真価が十分に発揮された。ニコラは、第2幕のヴァリエーションが相変わらず素晴らしい。
 
  ペザント・パ・ド・ドゥを踊ったメラニー・ユレルとバンジャマン・ペッシュは、特に新味はないものの安定したテクニックで余裕を見せ、デルフィーヌ・ムッサンは、きめ細かなパ・ド・ブレが美しく極め付けのミルタを演じてくれた。ヒラリオンのカール・パケットは、真面目だが、この役にはもう少しあくの強さがほしかった。

  オレリー&ニコラが現代的な解釈で『ジゼル』に新風を吹き込んだとすれば、次に登場したロイヤル・バレエからのゲスト、アリーナ・コジョカルとマ二ュエル・ルグリのペアは、それぞれの伝統に従って、規範を示した名演といえた。コジョカルは、数年前に、シャンゼリゼ劇場のガラ公演の際、第2幕のパ・ド・ドゥを踊ってすでにパリ・デビューしているが、この時、これ1曲だけで、”現在考えうる最高のジゼル役者の一人”と新聞評で絶賛されたのが記憶に新しい。この人は、ジゼルを演じているのではなく、生まれながらのジゼルなのである。1幕は、素朴で純真な村娘そのもの。22歳にしてすでに自分のジゼルというものができ上がったコジョカルのスタイルとルグリの正統的なオペラ座スタイルとの間にどうしても違和感があったのは、否めないが、これほど可憐なジゼルがあっただろうかと、ただただぼう然と引き込まれるばかりだった。

  第2幕では、ルグリの素晴らしいサポートに支えられ、この世のものとは思われぬ妙技。ルグリも、若いパートナーを見い出した喜びにあふれた会心の演技で、ノーブルの鑑のようなアルブレヒトを感動的に演じた。また共演のチャンスが訪れたらと思う。

  ヤン・ブリダールのヒラリオンは、ニヒルな演技でドラマに山を作っていたが、ミルタのアッバニャートはコジョカルと並ぶと、実力の差が一層歴然としてしまった。
  ジゼルの友人たちは、マチルド・フルステー、ドロテ・ジルベール、ミリアム・ウルド=ブラーム、シャルリーヌ・ギーゼンダナーら気鋭の若手がそろい、同年代のコジョカルに負けまいと、ライバル心を燃やしたのか、一人一人がソリストのようなはつらつとした踊りを見せ、心地よい。将来この中からオペラ座を代表するようなジゼルがきっと出てくることだろう。

  シリーズの最後には、本命といわれるスヴェトラーナ・ザハーロワとローラン・イレールのペアがお目見え。この舞台の模様は次号でご紹介したい。


<ジゼル>第1幕よりアリーナ・コジョカル

<ジゼル>第2幕よりコジョカル&ルグリ
 

 

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