ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA >>WEBサイトはこちら
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 ニューヨークは、急に暑くなってきました。街ではみんな半袖やキャミソールなど薄着で歩いています。さて、今はちょうどバレエ、ダンスのシーズン真っ盛りで、ABTもニューヨーク・シティ・バレエも公演が始まり、私も観たい公演がたくさんあります。初夏は、1年のうちダンス取材が一番忙しい時期です。連日取材が続いて、少々疲れ気味なくらいです。でもとても楽しませていただいています。今月号、来月号に分けてレポートをお送りしますので、お楽しみに。


ピーター・マーティンスの『ロミオとジュリエット』NYCB

 4月24日から6月24日まで、リンカーンセンターのニューヨーク・ステート・シアターで、ニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)の公演が行われています。皆様に耳寄りニュースですが、今年の春のシーズンに限り、ニューヨーク・シティ・バレエの100周年記念として、シーズン期間中ずっと15ドルの席(in the forth ring)が用意されています。これは通常の50%オフのお値段になっていますので、6月24日までにニューヨークに滞在なさる方は、ぜひご利用下さい。

 さて、今月号は、世界初公演の『ロミオとジュリエット』をレポートします。今回の公演の目玉で、早くから話題になっていたので、とても楽しみにしていました。この作品は5月2日から13日まで上演されていました。私が観たのは、5月5日の公演です。

 キャストは、ジュリエットはスターリング・ヒルティン、ロミオはロバート・フェアチャイルドでした。振付はピーター・マーティンスです。客席は満員でした。ニューヨーク・シティ・バレエは、女性ダンサーたちが全員クモのように手足が長〜くて美しい人ばかりが厳選して集められているので、この『ロミオとジュリエット』も絵として観ても素晴らしく美しかったです。手足が長くて細く美しい女性という外見を重視して、ダンサーたちが採用されているのでしょうね。そこが、実力主義でスター・ダンサーばかり集められているABTとの違いでしょう。ABTのダンサーたちは、体型は様々です。



スターリング・ヒルティン、ロバート・フェアチャイルド

 ストーリーはおなじみのもので、多くのバレエカンパニーが上演してきているものとほぼ同じです。古典なので振付も似かよっています。ただ、今回の舞台装置が、大きな岩の扉のようなものが真ん中にデーンと置かれていて、場面が変わるごとに、そこが開閉して街になったり、部屋の中になったり、教会になったりするので、見苦しくてあまりいいアイデアではないなと感じました。場面がすごく変わっても、その大きな扉は真ん中に置かれたままなのです。そのせいで扉のことが気になって、シーンとダンサーに集中できず、感情移入しにくくなっていました。たくさんのバレエ公演を観ているので、ついつい厳しい感想を持ってしまいました。シーンごとにすべての装置を入れ替えるように用意すると、予算がかさむからでしょうか?きっと予算を抑えて効果的にシーンを変えて演出できるように考えた、苦肉の策なのかもしれません。バレエは、舞台セットにも衣装にも、きっと莫大にお金がかかるのだと思います。今回が初演なので、きっと次回からは舞台装置の改良を重ねていかれることと期待します。

 有名なバルコニーのシーンでは、ニューヨーク・シティ・バレエではどのように演出していたかというと、彼らはバルコニーを舞台の真ん中の正面に向けて表現していました。ABTでは、このバルコニーのシーンは、舞台の上手にバルコニーが置かれていて、その下の大きな空間を使って広大に表現していたのですが、そのほうが観客としては圧迫感を感じずに伸び伸びと観ることが出来ると思いました。ABTのこの演出では、とても感動したことを覚えています。舞台セットが真ん中か上手かによって、こんなにも客席での受け取り方が変わるのかと、自分でも驚きました。もしもバルコニーが下手に置かれていたらどうなるかなとちょっと頭の中で想像してみましたが、圧迫感がありそうであまりピンときませんでした。なぜか、上手に置かれていた方が観やすくて、ダンサーに集中して感情移入して観劇することができます。不思議です。バレエでは、舞台セットもダンサーと同じくらい重要なことなのでしょうね。

 このバルコニーのシーンというのは、ロミオが夜中にジュリエットの家の庭に忍び込んできて、それに気付いたジュリエットがバルコニーから庭に下りてきて、2人で踊るというものです。最後はジュリエットがまたバルコニーの上に帰り、下のロミオと見つめあって、名残惜しそうにしてわかれて終わります。これは、この作品で特に目に焼きつく感動のシーンなので、ぜひ、舞台セットや全体の色合いなどにもっと力を入れてこだわって欲しいと、観客の一人として願います。(これは批判ではなくて、お客としての希望です。)ニューヨーク・シティ・バレエのダンサーたちもレベルが高いはずなのに、舞台セットとバルコニーの位置など周りのシーンが気になって気になって、気が散ってしまって、ロミオとジュリエットが熱愛中の恋人同士には見えず、クールすぎる印象を持ち、このシーンでは感動するまでには至りませんでした。

 最後の、ロミオとジュリエットが死ぬシーンは、舞台セットもダンサーたちの演技とも、とても良かったです。最後に、2人とも亡くなったところに彼らの両親と神父さんがかけつけて嘆き悲しんでいるシーンでは、とても感動して、鳥肌が立ちました。


ニューヨーク・フェスティバル・プレゼンツ〜インテラクティブ・ニューメディア・アワーズ授賞式

『エンブレイス』
 4月27日に、ニューヨーク・フェスティバルの一環として、インテラクティブ・ニューメディア・アワーズ授賞式が、ユニオンスクエアーのダリル・ロース・シアターにて行われました。この授賞式にはお金がかけられていて、ブロードウェイ女優やコメディアン、俳優やダンサーがセレモニーを盛り上げるためにパフォーマンスをしていました。その中で、以前このコラムでもインタビュー取材してご紹介しました、若手日本人ダンサーの福田純一が招待を受けてパフォーマンスをしました。ニューヨークならではの、面白いイベントの授賞式なので、取材に出かけてみました。

 福田純一は、現在、ニューヨーク在住で、ブグリシ・ダンス・シアターとぺリ・ダンス・アンサンブルなど掛け持ちで在籍して活躍中で、乗りに乗っている注目のダンサーです。驚くことに、この授賞式ではブグリシ・ダンス・シアターとぺリ・ダンス・アンサンブルの2つのカンパニーがパフォーマンスをしましたが、福田純一はこの2つともでプリンシパルで代表としてダンスを披露したのです。偶然が重なって同時に2つのカンパニーで同じところに呼ばれてパフォーマンスすることになったそうですが、驚きですね。2つともニューヨーク・ベースで活躍しているダンス・カンパニーだからでしょうね。

『ヘリッシュ・ラヴ』
 ぺリ・ダンス・アンサンブルからは、『エンブレイス』、『ヘリッシュ・ラヴ』を披露しました。イガール・ぺリ振付のパ・ド・ドゥで、ダンサーはクリスティン・フリーマンと福田純一でした。『ヘリッシュ・ラヴ』は新しい実験的な振付で、最初はにらみ合っていた2人が、見つめあって笑ったりさけんだりしながら、だんだんテンポが速くなってきて動きが激しくなり、2人の関係性も深まっていき、最後にキスして電気が消えて終わりという面白いものでした。これはいいアイデアだと思いました。とても印象に残っている踊りです。


 ブグリシ・ダンス・シアターからは、『ホット・ペッパーズ』という作品を披露しました。振付はジャクリーン・ブグリシです。ダンサーは男性2人、女性3人の5人です。2台のベンチを使って踊りました。

 日本人ダンサーが活躍してくれているとは、嬉しいことですね。


ニュージェネレーション・ダンス・カンパニーの『ザ・タンゴ・キング』

 5月12日に、カルロス・コペーリョのニュージェネレーション・ダンス・カンパニーの『ザ・タンゴ・キング』の公演がありました。カルロス・コペーリョはアルゼンチン人で、ダンサー、振付家、芸術監督です。ブエノスアイレスのカサブランカで、プリンシパル・ダンサーとしてデビューしました。1998年にブロードウェイでデビューしました。現在は、タンゴ・エスクエラ・デ・カルロス・コペーリョという学校も運営しています。

 このダンス・カンパニーには、日本人ダンサーの金子ミワもいます。彼女は、このメンバーの中でも特に上手で実力がありました。顔の表情も豊かですし、踊りにもキレがあります。15名のカンパニーメンバーのほかに、ABTからのスペシャルゲストとしてエリザベス・メルツとルシアナ・パリスが出演していました。彼らは、さすがにタンゴでもレベルが高かったです。

 今回のタンゴ公演は、第一部が「ブラック・ホワイト・タンゴ」で、12作品が披露されました。第二部は、「冬、夏」という作品の後に、「イン・ザ・ミロンガ」と題されて10作品が披露されました。

振付の多くは、普通のタンゴ・ダンサーでは決して踊れないような、クラシック・バレエがベースになったものがほとんどで、見応えがありました。バレエ・ベースでコンテンポラリーっぽい要素もあり、それでいてタンゴなのです。中には大技も時々出てきて、例えば、男性が女性をリフトして上でブンブン3周くらい振り回して、床に女性を放り投げて2メートルくらいスススーッと女性がすべっていってポーズを決めて終わり!というものもありました。大技が展開される度に、客席は感嘆の声をあげていました。ただの普通のタンゴではない、とても個性的なカンパニーでした。カルロス本人も、時々ダンスを披露していました。タンゴは、女性たちの衣装がとても美しく、女性らしく色っぽい、カッコいいものばかりで、よかったです。男性たちも、きちんとスーツにカフスをして踊るので、ピシッとしていてよかったです。
「ブラック・ホワイト・タンゴ」より
Maximiliano Copello 、Maria Blanco
「ブラック・ホワイト・タンゴ」より
Carlos Copello 、 Mariana Dragone
「ブラック・ホワイト・タンゴ」より



「アーバン・ブッシュ・ウーマン」

 5月8日から13日まで、ジョイスシアターで、アーバン・ブッシュ・ウーマンの公演が行われました。全員黒人女性のダンサーで構成され、女性中心の見方で、アフリカン・コミュニティーのメンバーによって、ダンス界にもっとパワーのバランスを作るために活動しているそうです。ニューヨークのブルックリン・ベースのカンパニーです。1984年に創立しました。

 芸術監督、創始者は、ジェウォール・ウィラ・ジョー・ゾラーです。ミズーリ州のカンザスシティー生まれで、ダンスで修士号も持っている才媛です。受賞も多く、2006年にはニューヨーク・ダンス&パフォーマンス・アワード(A Bessie)も受賞しています。

 ダンサーたちが全員黒人女性ばかりなので、私から観ると、とてもエキゾチックで面白かったです。みんな黒人ダンサー独特のしなやかな筋肉で、お尻が後ろに盛り上がっていて、動きも表情も派手で、見応えがありました。裸足で踊り、アフロヘアーのままの人も多かったです。ダンサーの体型も、結構、太っている人も多かったのでびっくりしました。人種の特徴を前面に押し出していて、すごくカッコよかったです。コンプレックスなどみじんも感じられなくて、みんな自分を受け入れていて自分のよさを生かしていて、とても明るくて、非常に好感度が高かったです。観ていて微笑ましくなりました。素晴らしいコンセプトだと思いました。

 一つ目の作品は、『フラッシュバック・フラッシュフォワード・・・ビー・クール・ベイビー!』で、世界初公演です。音楽はブラックバリバリで、ヒップホップ中心でした。音楽がとてもよかったです。ノリノリの音楽に乗って、9人のダンサーたちが、リモンテクニークも取り入れたコンテンポラリーっぽくもありブラック色の強い振付をしていました。カッコよくて、とても気に入りました。最後は、ダンサーたちが幕間に帰って行って終わっているのに、1名だけがまだ興奮状態でノリノリのまま熱くなっていて、そのまま舞台上に残って余韻を引きずって、音楽もないのにまだ踊っているので、誰かが“ビー・クール・ベイビー!”と彼女の肩をたたいて冷やしに来たところで終わりました。

 『ヒア・ウイ・ゴー、、、アゲイン!?』も、ブラック色の強い、面白い振付でした。
『チキンスープ』は、1981年の有名な作品だそうです。家で家事奴隷かメイドのようになってしまっている女性に対しての、セルフケアーについての問題を提起した作品で、演劇的な要素が強かったです。スライドの画像が映し出され、語りにのって、エプロンをつけた女性ダンサーが、掃除をしたり、お料理をしたりし続けて、疲れ果てている様子などを、パントマイムも交えて表現していました。

 『バティー・ムーブ』は、1995年の作品で、観客を笑いの渦に巻き込んでいました。バティーというのは、お尻のことです。アメリカでは黒人女性にとって、お尻とは一番重要なチャームポイントなのです。日本人女性に考えられないほど、お尻というものは一番大事だそうです。黒人男性たちには、女性はお尻によってモテるかモテないか決まるといっていいくらいです。黒人女性たちにとってお尻は大きいことが一番大事で、大きくて丸くて、後ろに出ていてボリュームよく盛り上がっているほうがいいそうです。このお尻が一番重要という感覚は、日本人にとってはよく分からない世界ですね。日本では女性のお尻は小さい方が可愛らしいとされていて大きなお尻はどちらかというと敬遠されていますが、アメリカは逆で、黒人女性はいかにお尻が大きくて立派であるかが大事なのです。日本人は顔とかスタイルを重視していそうですが、彼女たちは顔やスタイルよりもお尻重視なのです。そういう人種の価値観の違いまでも、ギャグにしてしまって、作品に仕上げているところがとても面白いと思いました。

 女性ダンサーたちは短いスパッツをはいてきて、アカペラで順番にラップしながら、一人ずつお尻をグリングリン回したり、フリフリさせていきました。全員一列に後ろ向きに並んで、お尻を突き出して、前に進んだり後ろに下がったり、お尻を回転させたり振ったり、なんだかすごく開き直っていて、面白かったです。アフリカの原住民の踊りを思い出しました。もちろん、最後の方には、激しいダンスの振付もでてきました。

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