皆様、こんにちは。ニューヨークは随分あたたかくなってきました。まだ朝や夜は冷え込みますが、春はもうすぐそこです。2月は素晴らしい公演が多かったので、先月号に書ききれなかった公演のレポートも載せました。先月号のレポートで、実はハンブルグバレエのものはあまりにもゲイ色が強かったので、当たり障りのないことしか書けませんでした。私はゲイについての本を公に出版したことがあるというのに、まともには直視しづらい過激な作品でした。しかし後になって、もっと突っ込んで書いてみたほうがよかったのだろうかと、考えもしました。ニューヨークなので色々な過激なダンス公演がたくさん来ますが、日本の読者の皆様に、どこまで突っ込んで内容を書いていいのかどうか、悩むところです。
ニューヨーク・シティー・バレエの3人の振付家による小品集
1月3日から2月25日まで、ニューヨーク・ステート・シアターにて、ニューヨーク・シティー・バレエの冬の公演が行われていました。見納めには、2月23日夜の公演、「フォー・ザ・ファン・オブ・イット」を観に行きました。3人の振付家の小品集で、とてもバラエティーにとんだプログラムでした。
『サーカス・ポルカ』は、サーカスの団長の、大人の男性一人と、サーカス団員は全員小さな子供たちばかりの、珍しい作品でした。幼稚園から中学生くらいまでの子供たちです。ジェローム・ロビンズの1972年の振付作品です。小さな女の子たちの踊りは、とても可愛かったです。会場は微笑みで包まれて和みました。
『ワルプルギスの夜(Walpurgisnacht Ballet)』は、ジョージ・バランシンが1978年にパリ・オペラ座に振付け、1980年にニューヨークで初演した作品です。音楽はグノーの『ファウスト』。すごく綺麗で、可憐な、バランシンらしい素晴らしい振付でした。すごく良かったです。王子様とティアラを付けたお姫様のような女性が2人でてきました。この3人の主役たちは、サラ・ミーンズ、チャールズ・アスケガード、アビ・スタフォードです。たくさんの女性たちも踊っていて、まるで花の妖精のようでした。最後には、女性たちは全員、長い髪を下ろして出てきて踊っていました。
『ジュ・デ・カルテ』は、ストラヴィンスキーの音楽を使って、ピーター・マーティンスが
1992年に振付けた作品です。トランプの物語です。ハート、スペードなど4種類のトランプ柄のチュチュなどの衣装を着ていて、とてもメルヘンチックで可愛らしいです。キングやクイーンもいます。主役たちはジャレド・アングル、ベンジャミン・ミルピエ、アンドリュー・ヴェイェッテ(Andrew Veyette)でした。ソロもたくさんありました。全体に、物語り風でした。衣装も振付も、楽しい作品です。
『火の鳥』は、1949年の、ジョージ・バランシン振付の作品です。何度か観たことがある作品なので、こちらのコラムにも書いたことがあります。これは、ニューヨーク・シティー・バレエの数ある作品の中で、私が個人的に一番大好きな作品です。舞台セット、シーンと衣装デザインは、シャガールによるものです。シャガールの絵の世界の中に紛れ込んだような、夢心地の錯覚を味わうことが出来ます。バランシンの振付も最高で、特に、火の鳥の感じがよくでている踊りが素晴らしいです。白鳥でも黒鳥でもない、まさしく火の鳥な感じなのです。何度観ても感動して、鳥肌が立つ素晴らしい傑作です。今回のファイヤーバード役は、プリンシパルダンサーのアシュレー・ボーダーが踊りました。何回でも観たい作品です。
『ワルプルギスの夜』
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『火の鳥』
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フラメンコ・フェスティバルのサラ・バラス
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毎年恒例の、スペイン・アンダルシアからやってくるフラメンコ・フェスティバルが、ニューヨーク・シティーセンターにて2月に行われました。ニューヨークを皮切りに、ワシントンやロンドンなどへツアーしていきます。去年観に行って、クリスティーナ・オヨスのフラメンコ・ダンスを拝見し、そのパワーに圧倒されて、今年もこのフェスティバルを待ち遠しく楽しみにしていました。できるだけ今後も毎年観に行きたいと思います。ニューヨークでもいろいろなフラメンコの公演がありますが、やはりこの本場のアンダルシアからダイレクトにやってくる本物のフラメンコが一番見応えがあります。私は一度、本場アンダルシアのセビージャのタブラオで至近距離でフラメンコを観たことがありますが、本場のフラメンコの迫力は圧倒的で他とは違います。早いし、力強いし、熱いのです。
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生演奏つきのフラメンコ・ダンスだけでなく、パコ・デ・ルシアをはじめとしてフラメンコギターの公演もありました。私が拝見したのは、取材関係者達向けのプレス公演で、2月14日にありました。
サラ・バラスの『バレエ・フラメンコ』です。サラはとても美しいスペイン女性ダンサーです。バックにはギター、歌手、パーカッション(カハという箱のようなものを素手でたたく)が生演奏をしていて、その前で、次々にたくさんのダンサーたちが踊っていきました。男性ダンサーと女性ダンサーたちが数人で踊るところもあり、彼らが一人ずつ長いソロを披露して代わっていきました。すごい迫力と熱い情熱に圧倒されました。サラのダンスは、一番すさまじかったです。そんなによく早く足を動かせるなあと感心するくらい、すごく速い速度で足を打ち鳴らし続けたときには、会場は歓声と拍手で包まれました。サラは容姿がとても美しい女性で、衣装もとてもセンスが良かったです。見とれてしまいました。
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コンパニーア・メトロスの『カルメン』
2月21日から3月4日まで、ジョイスシアターにて、コンパニーア・メトロスの『カルメン』の公演がありました。これは、バルセロナを拠点とするダンスカンパニーで、1984年に創立されています。20年以上も続いている、わりと古いカンパニーなのですね。創立者でもある振付家と芸術監督は、ラモン・オリェールです。
『カルメン』は、スペインの名作で、アントニオ・ガデスが出演したカルロス・サウラ監督の映画でもおなじみです。アンダルシアのたばこ工場で働くカルメンが、彼女を捕らえたホセと恋に落ちます。しかし村にやってきた闘牛士とまた激しい恋に落ちて気持ちはそちらに動いてしまいます。彼に対しては全く冷めて冷たい態度になります。そしてついには、彼が嫉妬にかられてカルメンを殺してしまう、というお話です。このカルメンの激しい情熱と、あいまいさが全く無いはっきりした意思の強さが悲劇を生んでしまうのですが、それが典型的なスペイン人の激しい気性と情熱をよく表現している作品だと言われています。このスペインの古典的な物語を、コンパニーア・メトロスではどのようにダンスで表現しているのか、楽しみにしていました。
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舞台は、タバコ工場の屋上という設定でした。女性たちの衣装がとても可愛くて、スペインらしいヒラヒラの多いワンピースでした。一人年配のフラメンコ・ダンサーの女性が、みんなが踊っている周りの端っこで、時々フラメンコのサパテアードを打ち鳴らして、場面に変化を加えていました。味が出ていて、なかなか良かったです。周りの女性たちも少しフラメンコを混ぜていましたが、基本的には振付はコンテンポラリーです。
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全体が物語りになっているのですが、それを全て踊りで表現していたので、すごく感心しました。観ているだけで、映画のようにストーリーや登場人物の感情が伝わってきて分かります。主人公のカルメンを演じている女性は、最初の彼や闘牛士に抱かれる様子を、2人で踊りながら服を脱いで、上半身ヌードで体当たりで表現していました。リフトも混ぜた踊りだけで映画のようなシーンを作っている振付はすごく良かったです。ラモン・オリェールの才能は素晴らしいと思いました。
最後、カルメンが殺されるシーンでは、屋上の水のタンクの蛇口が全開にされて、本当に水がジャージャーとすごい勢いで出ていました。そこでホセとカルメンがもみあって水浸しになり、首を絞められて殺されてしまいました。水はカルメンが倒れたその後も流れたままです。水がとても効果的で、観客の感情も高ぶりました。ものすごい拍手で、観客たちは総立ちでした。すごかったです。
ジョイスシアターのブグリシ・ダンス・シアター公演
3月13日から18日まで、ジョイスシアターにて、ブグリシ・ダンス・シアターの公演がありました。コンテンポラリーです。ジャクリーン・ブグリシが振付家、芸術監督を務めるダンス・カンパニーです。彼女はマーサ・グラハムのカンパニーで12年間プリンシパルを務め、20年間にわたってかかわりました。以前にこの欄でインタビューした日本人ダンサーの、福田純一も出演していました。福田純一は、ニューヨークを拠点にプロのダンサーを続けていて、ダンス教室の講師としても活躍中です。
私が観た公演は、プログラムBです。全ての作品の振付は、ブグリシによるものです。
2002年作品の『レクイエム』は、衣装も個性的でした。5人の女性ダンサーたちが、大きなシーツのような布にくるまって、それぞれイスの上に座って背中をこちらに向け、座ったまま動くところから始まりました。イスの上にみんな立ち上がると、シーツは裾が下にのびて実は長いスカートでした。イスにスカートをかぶせてその上に立って、すごく高くなりました。朝焼けのように舞台の左右から強いライトが当たり、両腕を上げて顔を上に向けて、お祈りしているような感じでした。スカートの長い裾を手で持ってはためかせて走り回って踊るシーンも印象に残っています。
『Acapelorus』
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『Acapelorus』
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初演の『カラバッジオ・ミーツ・ホッパー』は、男女大勢が、全員、顔に立体的な面白い仮面をかぶって踊りました。みんな、スーツやワイシャツなどきちんドレスアップしていました。静かな曲から明るい曲、ジャズっぽいビバップなど音の変化と共に、振付も色々なコントラストを見せていました。
『Acapelorus(アカペロラス)』(セイウチのしっぽ)も初演です。かみなりの音とポエムから始まりました。ストーリーが感じられ、物語を語っているような踊りでした。男女数人で踊りました。
『アトム・ハーツ・クラブ・スイート No.1』も初演です。今日の公演で一番好きな振付作品でした。個性的で変わった振りで、リズミカルで楽しく、早い踊りです。福田純一のソロも目立っていました。
全体的に、ブグリシの振付は個性的で彼女のカラーが出ていて面白かったです。マーサ・グラハムの影響だけではない、独自の個性を感じました。とても良かったです。
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