ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA >>WEBサイトはこちら
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 皆様、こんにちは。ニューヨークは随分と肌寒くなってきました。これから年末にかけて観たいダンス公演がたくさんあるので、とても楽しみです。

サラ・ミッチェルソンの『DOGS』

 ニューヨークで活動している振付家、サラ・ミッチェルソンの『DOGS』の公演が、BAMで、10月18日から21日まで行われました。彼女はイギリスのマンチェスター生まれで、41歳。ダンサーたちは、サラ・ミッチェルソンも含めて4人。彼女の長年の協力者であるダンサーのパーカー・ラッツは、サラとともにビジュアル・デザイナーでもあります。

 舞台セットはとても独特で個性的でした。全体に色味は白黒に近く抑えられていて、ロマンチックなのにカッコいいデザインでした。舞台の床から大きなランプのような上を向いた照明を生け花を生けるように色々な方向に向けて束ねて、3ケ所置いてありました。これは、茎が黒くて花が白く光っている巨大な生け花のように見えました。天井には、7つの照明を束ねて1輪の花のように見えるものを、8個つり下げていました。後ろには細長い白いテーブルが横向きに置かれ、その上には山のようなチキンの丸焼きが積み重ねられていました。
ところどころ、スポットライトのみをあてて光と影の明暗を激しくしたり、スモークをたいたりして、舞台の前のほうだけしか見えなくなったり、後ろも見えるようになったりしました。この照明の使い方も面白かったです。


 振付けはクラシックベースのものでしたが、裸足で踊りました。最初はギターの音だけが長く鳴っていて、ずっと1ケ所を軸にしてくるくると回り、時々足を横にグランバットマンする、それを延々とずっと続けていたので、ひらひらした白い衣装も手伝ってまるで蝶が舞っているように見え、とても幻想的でした。近くに座っていた男性の観客が、“ワーォ、セクシー!”とつぶやいていたのに驚きました。衣装は白い全身タイツのようなものの上に白い薄いマントのようなものをかぶっていたので、衣装がセクシーなわけではないと思います。くるくると回り続ける振付や幻想的な照明などが合わさって、そのように感じたのでしょう。

 突然幕が閉じ、またすぐに幕が上がり、同じ女性が同じ振付でくるくると回っていました。そして音が止まり、テーブルの上のチキンをちぎって食べ、再び幕が閉じました。するとまたすぐに幕が開いて、同じ女性が同じ振付で回り続け、それを何度か繰り返しました。やがて音楽はクラシックに変わり、2名の黒いドレスの女性も加わって、踊り始めました。何度も幕が閉じ、また上がり、踊りが続きました。何度も何度も幕が閉じては上がると、舞台の向こう側ではダンサーが踊り続けているところを突然目にすることになったので、私たち客席では、まるで私たちの存在に気付かずに舞い続けている蝶を何度もこっそりのぞき見しているような錯覚におちいりました。あるいは、舞台上から客席に向けて、“イナイイナイ・バー”をされているような気分にもなりました。

サラ・ミッチェルソンの『DOGS』

そして一旦、休憩時間に。ドリンクなどの売店があるところに向かうと、なんと、舞台上に置いてあったチキンの丸焼きが運ばれてきて、その場で切り分けられ、観客たちにワインとともに振る舞われていました。
舞台の続きはスモークでいっぱいで、最初はあまり見えないような状態で、踊るダンサーの姿が霧の中にうっすらとしか見えませんでした。これもとても幻想的でした。男性も加わって踊り、後ろの方では白いテーブルに2人の女性が座って、何かをナイフとフォークで食べていました。
そして、音楽が止まって、今度はテーブルに座っている人たちが皆で、セリフで演技を始めました。たわいもない会話のセリフが延々と続き、時々客席が爆笑していました。


ダンサーの質が高いABTの小品集

10月18日から11月5日まで、ABTの毎年恒例のシティーセンター公演が行われました。シティーセンター公演では、ふだんの公演と違って様々な現代の振付家の作品が小品集で上演されます。ABTのとてもレベルが高いダンサーたちが、現代の振付作品を踊るので、コンテンポラリーやモダンでも、とても見応えがあります。さすがダンサーの質が高いです。

 私が観た日は20日の公演でした。その日は、鍛冶屋百合子も出演していました。
 一つ目は、ジョージ・バランシンの『シンフォニー・コンチェルタンテ』。1947年の作品です。モーツァルトの曲が使われていました。ジュリー・ケント、パロマ・ヘレーラが主役で踊りました。女性2人のペアで踊るところが多かったです。途中、王子さま1人と女性2人の3人で、リフトをしながら踊るところがあり面白かったです。いつも思いますが、ジュリーの手や首の動かし方が繊細で、羽のように軽やかで美しかったです。鍛冶屋百合子もとても目立つ役で出ていました。

 『ドリンク・トゥー・ミー・ウィズ・シン・アイズ』は、マーク・モリスの振付、1988年の作品です。女性の衣装は白いテロンとした生地の短い丈のワンピースを着で、エンジェルのように見えました。手はアン・オーではなく、手先をクロスさせバッテンにして踊っていました。右回転の直後に左回転を入れることを繰り返していたので、踊りにくいだろうなと感じました。とても面白い振付でした。

 『イン・ザ・アッパー・ルーム』は、トワイラ・サープの振付で、1986年の作品です。こちらは前に一度観たことがある作品ですが、息を呑むような目まぐるしく早い展開と迫力に、圧倒されます。素晴らしい振付です。鍛冶屋百合子も目立つところに出ていました。パジャマのような縦のストライプの短いワンピースのような衣装に、赤いトウシューズかスニーカーで踊っていました。繰り返しの電子音楽に乗って、舞台の右から左から、ダンサーたちが次々と速い振付で現れては消え、走馬灯のような速さで、圧倒的な振付の作品でした。とても見応えがあって、2度目に観た方が感動しました。終演後、客席は総立ちで拍手を送っていました。


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