皆様、こんにちは。過ごしやすい秋になりましたね。さて、8月下旬から9月初旬は年に一度、ジョイスシアターやBAMなど、ニューヨークの劇場が休暇になるので、今月号はレポートが少なめになっています。私自身も、数年ぶりに、この機会に長期で一時帰国することができました。いろいろな公演を見逃さないようにしたかったため、なかなかタイミングを見計らって帰国するのは難しいです。10月はニューヨークのダンスシーズンも真っ盛りになります。
カンパニーCのトワイラ・サープ作品ほか
7月下旬に、ジョイス・ソーホーで、コンテンポラリー・バレエのカンパニーCの公演がありました。ジョイス・ソーホーは、ジョイスシアターの系列です。とても小さな劇場なので、客席と舞台が至近距離で、すごい迫力で踊っているダンサーたちを観ることができます。時々、観に行きたくなる劇場です。
このカンパニーは、2002年に、サン・フランシスコで結成されました。著名な振付家の外部の作品も取り入れ、彼ら自身の振付作品も上演しています。ダンサーたちは14名、率いる芸術監督はチャールズ・アンダーソンです。彼は1985年から93年まで、ニューヨーク・シティ・バレエに在籍したダンサーでした。NYCBのクラシック・バレエ・ダンサーだった人が作ったコンテンポラリー・バレエのカンパニーなので、とても興味深く拝見させていただきました。
ダンサーたちのレベルはとても高く、素晴らしかったです。作品は、とてもバラエティーに富んでいました。外部からの振付家の作品は選りすぐられていて、アレクサンドレ・プリオア、パトリック・コービン、トワイラ・サープの作品でした。それに加えて、芸術監督のチャールズ・アンダーソンの作品も上演されました。
特に、トワイラ・サープの『カントリーダンス』は、彼女のなかでは1976年の古い作品でしたので、興味深かったです。カントリーのような、フォークダンスのようなものが中心で、アメリカの古い音楽を使っていました。女の子たちは、古き良きアメリカのような、ノースリーブのフレアーギャザースカートを着ていました。フォークダンスのように、男女ペアの振付も多かったですが、数人で踊るところもありました。全体的に、楽しそうな感じが良く出ていました。
チャールズ・アンダーソンの作品『ハッシュ』は女性のソロで、くるくると回りながら動くところが多く、全体的な印象は風に舞っているようなかわいい踊りでした。また、『アポシオペシス』は男女6名で踊り。中東のような衣装と踊りで、とても面白い振付でした。音楽も踊りも静かでゆっくりとしたものから激しいものまで、何度も強弱が繰り返されて、とてもメリハリのある作品でした。
「スミューイン・バレエ」
8月下旬に、ジョイスシアターで、スミューイン・バレエの公演が行われました。トニー賞とエミー賞受賞振付家のマイケル・スミューインが芸術監督をつとめるカンパニーです。彼は、元ABTのプリンシパルダンサー、振付家でした。その後、サンフランシスコ・バレエの芸術監督を、1973年から85年までつとめました。様々なブロードウェイ・ミュージカルやテレビ、映画に振付作品を提供してきました。私は、以前にこのカンパニーの公演を観て、その振付の完成度の高さに驚き、以来、私は彼の大ファンです。音と振付がとてもよく合っています。この公演も楽しみにしていました。今回の公演では、3つの作品が上演されました。
『ブルーグラス・スライド』は、2005年の作品です。舞台いっぱいに大きなスクリーンが置かれていて、そこに、アメリカの古い伝統音楽のブルーグラスを演奏している風景が映っていました。その後スクリーンがなくなり舞台が現れると、はしごと3本のポールが置かれていました。ダンサーたちは、男女とも上下黒のタイツとタンクトップを着ていました。
ところどころ、ポールにつかまって回転したり巻きつきながら踊る、ポールダンスが振付に取り入れられていたので驚きました。 |
『ブルーグラス・スライド』 |
ポールダンスは、ニューヨークでも、夜中から朝にかけてジェントルマンズ・クラブなどで女性ダンサーたちが踊っている、女性のセクシーさを表現したダンスです。そこで踊っているダンサーの多くは、正式に幼少時からダンスやバレエの教育を受けたわけではない我流で這い上がり大金を稼いでいる女性たちで、日本人もいます。劇場で踊るバレエやダンスとは正反対に位置する、どちらかというといかがわしいところで踊られているアンダーグラウンドなダンスなのです。以前、友人のプロのダンサーに、このポールダンサーたちが踊りの基礎がないのに大金を稼いでいる話をしたら、「そんなのプロのダンサーといえないわよ。お客は踊りじゃなくて女性の胸でも見に来ているんでしょう!」と眉間にしわを寄せてひどく軽蔑し拒否反応を示していました。でも、ポールダンスはストリップとは違います。私も一度、ニューヨークのクラブの催しのパフォーミングタイムに、全身刺青を入れて黒いエナメルの衣装を着た奇抜な女性ダンサーがポールダンスを披露しているのを観たことがあります。ですから、正統派で大御所のマイケル・スミューインが、アングラなポールダンスをソフトに振付に使っているのを観て、なんてオープンな頭の柔らかい人なのだろうと、本当にびっくりしました。彼なりの味付けで、ポールダンスは、すっかりシアター向けの明るいエンターテイメント仕立てになっていました。
彼の振り付けでは、ポールをうまく使って、男女ペアがポールをつかみながらそれを軸にして、2人が語り合うような舞台になっていました。側転やバック転、簡単なタップダンスや、トウシューズで女性たちが踊るところもありました。とても見ごたえのある面白い作品でした。
また、『シンフォニー・オブ・PSALMS』は、今年の新しい作品で、ストラヴィンスキーの音楽を使っています。男女とも白い衣装で、男性は短パン、女性はミニスカートでした。これは、男女のリフトが多かったです。長い間、女性が逆さまに男性に持ち上げられていて、組体操のような難しそうなリフトが続いていて、面白かったです。
『フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン』は、2004年の作品で、フランク・シナトラの音楽を全編使ったものです。全部で9曲で、次々にシーンが変わって、男女ペアのダンサーたちが入れ替わっていきました。舞台後ろは、真っ暗な中にたくさんの電球が光っている、星空になっていました。ミュージカルのようなシアターダンスが多かったです。簡単なタップダンスの振付もありました。観客も一緒になって楽しめる、分かりやすい楽しいダンスでした。
『ブルーグラス・スライド』 |
『シンフォニー・オブ・PSALMS』 |
『シンフォニー・オブ・PSALMS』 |
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