ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA >>WEBサイトはこちら
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 このコラムの連載を始めて1周年になりました。ご愛読ありがとうございます。無事に続けさせていただいて感謝しております。ニューヨークは斬新なコンテンポラリー・ダンスの公演が話題になるので、クラシック・バレエの情報プラス、コンテンポラリーのレビューも押さえて、今後もニューヨークならではのコラムにしていきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
 ニューヨークにはようやく春が訪れ、桜やモクレンの花が満開です。夜は肌寒いですが、昼間はとても暖かくなってきました。まだまだ春先です。
 今回もリヨン・オペラ・バレエの『トリコデックス』の公演では感動して、朝まで眠れませんでした。ダンス・ブラジルのカポエイラの迫力にも圧倒されました。

●カンパニー・マギー・マランの『拍手は食べられない』

 4月6から11日まで、ジョイスシアターでカンパニー・マギー・マランの公演が行なわれました。フランスのトゥールーズのカンパニーです。今回の公演は、8人のダンサーによる『拍手は食べられない』の1作品のみで、2002年のリヨン・ダンス・ビエンナーレに出品した作品です。
 彼女はこの作品で、空間とダンサー達の肉体を使って、ラテンアメリカの国々の、信じられないほどの人間と文化の破壊と、彼らの土地にある勢力に対する従属と、彼等の解放に対する強いコントロールに苦しんでいることについて表現しています。せっかくそれらの国々には、信じられないくらいの豊かな人間と文化、驚くべき暖かさと強さがある人々が住んでいる土地があるので、黙って見ているわけにはいかないとのことです。

マギー・マラン
<拍手は食べられない>

 舞台には、カーテンのように上から七色の細いテープがぎっしりつるされており、コの字型の3方向が覆われていました。 そのテープをかき分けて、ダンサー達が出入りしていました。ダンサー達の衣装は普段着と、普通の皮靴です。途中休憩無しのノンストップで、1時間余りの短い作品でした。 怒り、戦い、憤りなど、ネガティヴな感情を表現したものなので、ダンサー達は顔も無表情か怒っていることしかなくて、全体に暗く重たくて、観ているほうも気分が落ち込んでしまいました。 ダンスでネガティヴな政治的問題を提示することは、さぞ難しいことなのでしょう。きっと、振付家としての彼女なりの、思いきった実験的な作品だったのだと思います。 人々に問題に気付かせるという提示の役割はあるけれど、そういう暗い側面だけだと、観るほうまで暗く落ち込んでしまってストレスがたまります。 問題を提示するだけでなく、それをどのようにポジティブに大変換するかという解決の可能性の一例を示すなど、その後のフォローも作品の中に盛り込んでほしかったです。 ダンスという要素はほとんどなく、演劇に近い作品でした。音楽もリズムのないどんよりとしたものでした。
現在は世界的にネガティヴな出来事が多いですが、そんな時だからこそ、観客はダンスやバレエの舞台に、ハッピネスや華やかさ、楽しさを求めていることと思います。 観終わってから元気をもらってポジティブな気持ちになれる作品のほうが、受け容れられるでしょう。


●マーサ・グラハム・ダンス・カンパニーの公演

 4月14日から25日まで、シティーセンターにて、マーサ・グラハム・ダンス・カンパニーの公演が行われました。 日本人ダンサーのミキ・オリハラさんとユウコ・スズキさんが出演しています。私が観たものはプログラムA『キルケ』(1963)、『Herodiade』(1944)、 『エランド・イントゥー・ザ・メーズ』(1947)、『メープル・リーフ・ラグ』(1990)と、プログラムB『ザ・アウル・アンド・ザ・プッシーキャット』(1978)、 『心の洞窟』(1946)、『スケッチース・フロム・クロニクル』(1936)。 今回上演の作品の大部分は、歴史的な現代アートの彫刻家であるイサム野口(日米ハーフの私生児だった人で、美術館がニューヨークにある)による舞台セットでした。 衣装は上品な、長い裾のフレアーワンピースが多かったです。

 このカンパニーは彼女のダンススクールと同時に、1926年に創立されました。アメリカで最も古いコンテンポラリー・ダンス・カンパニーとして知られています。 マーサ・グラハムは、基本的な人間の動作と、構成とリリースの最も簡単な動きの始まりをもとに、彼女自身のテクニックを発達させました。 そして「ダンサーの肉体の感情活動を拡大させる」動きのボキャブラリーを作り上げました。 彼女のダンスと振付は、シャープな、角張った、急激に変化する、直接的な動きを通して、人間の感情の深みを露わにしています。 世界中の多くの偉大なコンテンポラリーの振付家たちが、マーサ・グラハム・テク二―クを学んだり、彼女のカンパニーに在籍したりしています。 彼女は、生涯に181作品ものバレエとダンスを創作しました。

 全体に、単純な振付とゆったりした音楽が多かったです。プログラムAで印象に残った作品は、『エランド・イントゥー・ザ・メーズ』、『メープル・リーフ・ラグ』。 後者は、舞台セットに、きしんで揺れる大きなバーがありました。そのバーの上に、男女のダンサーが座ってバランスを取りながら、少しづつ近付いて抱き合ったり、ペアで踊りました。 そして合間に、衣装が全身タイツのようなレオタードの、大勢のダンサーが通り過ぎていきました。 カップルが次々に出てきて、ペアで踊り、バーの上に座り、3組目も4組目も5組目も、最後にはバーの上に抱き合って座りました。 6組目も踊って、今度はバーの前で2人並んで座ります。やがて皆消えてしまって、最初のカップルの女のこの方だけが残り、バーの上でほお杖をついて終わりました。 この作品は、何箇所でも、皆が笑っていた、楽しい作品です。

 プログラムBで印象に残った作品は、『ザ・アウル・アンド・ザ・プッシーキャット』、『スケッチース・フロム・クロニクル』。 前者は、アメリカン・ヴォーグ誌の編集者であるアンドレ・レオン・タレイがストーリー・テラーとして舞台に出ていて、 彼は大きなお腹の大柄な黒人で絵になっていて、会場を沸かせていました。 詩人エドワード・リアーの同名の詩をもとにして創作した作品です。 78年のメトロポリタン・オペラ・ハウスでの初演時には、なんとナレーターはライザ・ミネリでした。フクロウとネコのカップルが出会い、結婚するまでのお話です。 イルカ達や人魚達も出てきて、結婚式の楽しいシーンもあり、明るく楽しい舞台でした。後者は、1936年当時の、ヨーロッパのファシズムの脅迫に対する答えの作品でした。 とてもスピード感にあふれた迫力のある振り付けで、とても良かったです

マーサ・グラハム
<ザ・アウル・アンド・ザ・プッシーキャット>

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