HOME信州上田 TSUKURUTE 〜手にした品物の向こうに、今日も作り手がいます〜 『抜きつ、抜かれつ』

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『抜きつ、抜かれつ』
手にした品物の向こうに、今日も作り手がいます。

清らかな空気に包まれた、信州上田。夢を支える製品が、今日も元気に育まれています。

「チャコット 上田工場」の特産品。それは例えば、美しさと機能性を兼ね備えたトゥシューズ。あるいは、激しい動きにも影のように寄り添うジャズシューズ。それらが生まれてくる舞台裏を、そっと覗いてみました。

靴づくりの第一歩。トゥシューズの表面となる艶やかなサテン生地や、底のパーツとなるしっかりとした手触りの牛革、ジャズシューズに用いられるしなやかで丈夫な革素材などから、必要な形状を無駄なく丁寧に抜き出していく。これが「型抜き」です。

棚に整然と並ぶのは、靴の種類やサイズによって異なる、数百もの「金型」。それはさながら、踊り手が出番を待つ、劇場の控え室のよう。鉄のボディはずっしりとした渋い質感。その先端には、白銀の輝きを放つナイフのような鋭さが秘められています。

作り手が金型と共に向かうのは、「クリッカー」と呼ばれる年季の入ったプレス機械。革をセットし、見定めた位置に金型を当て、瞬時に強い圧力をかけます。1足につき6パーツ。これを1パーツずつ、ひとつひとつ丁寧に抜いていきます。

その領域には更なる大物も。「直断機」という、頼もしい重鎮です。サテン生地を20枚重ねて、一気に抜くことが出来る実力派。
『ドンドンドン!ガチャン!!!』 と、心臓が驚くほどの大音量を轟かせ、老兵としての存在感をいかんなく発揮しています。

『同じ1足の中で、シワの向きや柔らかさなども上手く合わせられるよう、常にバランスを考えています』 そう語るのは、ベテランの作り手。まっすぐな眼差しは、製品に対する実直な姿勢をもうかがわせます。確かな技術で余すところなく抜かれ終えた材料は、まるで完全に解き明かされたパズルのよう。プレスは単純そうに見えて複雑さを伴う、人の手と頭による高度な作業です。

手元には、通称「抜き板」という円熟味のある作業台。その表面をよく見ると、意外なことに微細でカラフルな色彩の欠片が、万華鏡のごとく混然と刻み込まれています。それらは革の裏地のかすかな毛羽の名残。ピンクやベージュ、黒などに留まらず、赤・青・黄色や紫といった、鮮やかに彩られたシューズたちがここから生まれていった証です。

モノ作りでも踊りでも、大切なのは基本の「型」。腕に磨きをかけた作り手は、素材や道具と呼吸を合わせ、今日も切れのある型抜きのリズムを刻んでいます。

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